長岡アジア映画祭実行委員会!ブログ

新潟県長岡市で活動します長岡アジア映画祭実行委員会!です。

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『第12回大阪アジアン映画祭』 映画祭巡礼記

*恒例となってるS東京特派員の大阪アジアン映画祭巡礼記。
しかし今年はS東京特派員は仕事が多忙なために大阪行きを断念、
そのピンチヒッターとしてS東京特派員の奥様が大阪へと赴いたのでレポートを送っていただきました。
ありがとうございます。
読みながら機会があれば同じ映画について二人の視点から書かれた巡礼記もいいなぁ、と思いました。

今回送られた作品はどれも気になる映画なのですが、担当者個人的にちょっと驚愕したのがタイトルを書くのもどうかと思うエログロでバチアタリな映画を刹那的に撮り続けていた香港のハーマン・ヤウ監督の新作は小津安二郎監督へのオマージュ!らしいことでした。でも容姿は70年代の長髪ロッカー風のままなのは変わってないなと思いました。

http://www.oaff.jp/2017/ja/index.html

17426307_1037124906388614_8746797336446105356_n.jpg 『インターチェンジ』ポスター

3/10-11の二日間で大阪アジアン映画祭に行ってきました。
今回、私は『52Hz, I LOVE YOU』以外はABCホールで観たので移動はほとんどなく楽でしたが、ABCホールは作品と作品の間の時間があまりないところへさらに上映後にトーク&サイン会を行うので、次の作品の開場が押すことも…。毎回上映作品やゲストが多く見応えはありますが、もう少し余裕があってもいいかなあという気はします。別の作品のために移動する場合はトークを諦めざるを得ないですし。
今回は2日間で7本の作品を観たので、簡単に感想やトークの様子を書いてみたいと思います。

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『インターチェンジ』デイン・イスカンダル・サイード監督のトークの様子です。

① 『インターチェンジ』
黒魔術的な殺人事件が頻発するクアラルンプール。刑事のマンと犯罪写真家のアダムは捜査の中で現場に散らばっている骨董品のガラス乾板に気づき、さらにはすでに絶滅したはずのティンガン族の存在に行き当たる…。百年前のボルネオと、現在のクアラルンプールの時間が交差する不思議な作品でした。
血管が露出した死体がなかなかえぐかったです。あと鳥男が出てくるのですが、肌から鳥の羽が生えてくる様子もなかなかえぐかったです(ふさふさ生えるのではなくまばらなのがまたなんとも…)。
監督のトークによると、ティンガン族は架空の民族で、実際の民族を使うとやはりいろいろ問題が出てくるので自分で考えたとのこと。また俳優や言語が多国籍に渡ることは自分の身近では普通のことなので、特に国籍を意識して俳優をキャスティングしたわけではないというお話がありました。マレーシア、インドネシアの一帯は昔は「サンタラ」と呼ばれていたそうで、そういった地域での一体感を意識している感じの作品でした。

17353148_1037126359721802_7689602071214230270_n.jpg『キタキタ』ポスター

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『キタキタ』トークの様子 左からプロデューサー:ピオロ・ホゼ・パスクアル 監督:シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード 出演:アレッサンドラ・デ・ロッシ
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② 『キタキタ』
札幌でガイドをしているフィリピン人女性・レアは、恋人に捨てられたショックで一時的に失明してしまう。失意の中で、隣に越してきたフィリピン人男性のトニョに最初は辛く当たるが、次第に心を開き始め、ある日ついに目が見えるようになるが…。
最初は何も考えずに観ていたので、うーん、こんな失明した直後とか絶妙なタイミングで家の隣に親切な同郷人が越してくるかな?とか思いながら見ていたのですが、もちろんそこにはエピソードが隠されていて、ラストで一気にその秘密が明かされるのでした。
 タイトルの『キタキタ』は、「あなたを見る」という意味だそうです。作中では、日本の「あしゆ(足湯)」が「I see you(あなたを見る)」に似てるね、というセリフも出てきます。また撮影地が札幌(北)だったことについて、監督曰く、最初は渡された脚本がまったく自分の好みではなく、いろいろ変更を加えていく中で場所が札幌になった、その後名古屋に滞在していた時に、ちょうど北海道も「キタ(北)」ですね、と聞いたそうです。偶然の一致でタイトルと撮影地が重なったんですね。
 札幌での撮影はほとんどゲリラ撮影だったそうです。

17353625_1037129126388192_5750409218964136566_n.jpg『77回、彼氏をゆるす』ポスター

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『77回、彼氏を許す』ハーマン・ヤウ監督

③ 『77回、彼氏をゆるす』
アダムと別れるべきか別れないべきか?悩むエヴァ(字幕ではイーファだったような?)はある日「心のシャッター」という店で「77回、彼氏をゆるす」というノートを買い、別れを意識した出来事を書き溜めていく。77回分溜まったところで、わざとノートを残して家を出ていく。エヴァが出ていったことでやけになっていたアダムも、ノートを読むうちに些細なことで彼女を傷つけていたと知りなんとか二人の関係を修復しようと奔走する。破られた77回目のエピソードのページには何が書いてあったのか、果たしてアダムはエヴァとよりを戻すことができるのか?
エヴァは小津安二郎が好きだという設定なようで、アダムが映画に遅刻してエヴァがイライラしているシーンでは映画館に「小津安二郎」の文字が見えますし、二人は日本に旅行した際にわざわざ湘南・茅ヶ崎館(旅館)の小津安二郎が脚本を書いた部屋に宿泊したりしています。その辺は日本人の観客からするとちょっとうれしいシーンかもしれません。
 恋愛あるある的なエピソードがいろいろ出てきますし、エヴァは離婚専門の弁護士で毎日困ったクライアントの相手をしている、アダムとはロースクールで知り合ったなど、なんとなくアメリカの恋愛ドラマに似た雰囲気も感じます。

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↑『一念無明』、ウォン・ジョン監督と脚本のフローレンス・チャンさんです

④ 『一念無明』
今回のコンペでグランプリを取った作品です。見る人それぞれの体験によってかなり感じ方が違ってくるのではないかと思います。
黄進(ウォン・ジョン)監督は28歳と大変若い方ですが、父親の心情なども非常にうまく表現されていると思いました。上映前のトークで監督は、この作品を観て家族とは何か、自分にとって本当に大切な人とは、ということを考えてもらえたらと話していましたが(ちなみに上映後のトークは、残念ながらこの後の『52Hz, I LOVE YOU』を見るために諦めました)、実際、唯一の正解はなく、一人一人が答えを出すべき問題なのだろうと思います。
阿東の母親は病気を患って一人では生活できないが、献身的に介護をする阿東に向かって「お前なんか堕ろせば良かった」「弟は優秀なのに」という言葉ばかりを投げつける。仕事を辞めて介護をしている阿東はそれだけでも強いストレスを感じているが、ある日母親が介護中の事故で亡くなったことで躁うつ病を発症し入院。月日が流れ、退院した阿東は父親のところへ身を寄せるが、長い間会っておらずしかも精神科から退院したばかりの阿東とどう向き合うべきかが父親には分からない。阿東は、自分が母親の介護をしている間お前も弟もいなかったと父親を責めるが、父親がなるべく母親の傍にいないようにしていたことにも父親なりの苦悩があり…。
精神面での各人の葛藤に加えて、精神科入院歴のある阿東の再就職の難しさ、父親の事故、精神科医の機械的な対応、病気に対する近所の人の好奇と非難の目など、外的な要素も悪くなる一方。
父親はアメリカにいる阿東の弟に電話をかけるが、阿東のことは入院させろと言うだけ。アパートの住人からは、あんな人間とは一緒に暮らせない、出ていってほしいと言われ…。父親は最後に、患者家族会のグループトークの中で自分の心情を話し、これから阿東とどうしていくのかを決意する。
これらの一連の問題にこれといった解決策はなく、映画も観客自身に判断が委ねられる終わり方です。
弟の言う、兄のことは入院させろ、という言葉は、もしかしたら完全な間違いとは言えないのかもしれません。患者との接し方はいかに善意があっても知識のない人間には難しく、時に家族や社会との関わりの中で患者の病状が悪化することもあり(映画の中ではかつての婚約者との再会、そして彼女の入信の様子によって、阿東は強いショックを受け自分を抑えられなくなってしまいます。そしてその発症の様子をおもしろおかしくネットにアップされたり非難されることで益々追い詰められていきます)、介護などと同様に共倒れになる危険性も考えられます。もし専門家による適切なサポートが受けられれば、患者にも家族にも安心感が生まれ未来に対する希望が見えてくるでしょう。
しかし実際には映画の中のように、医者を頼っても機械的に薬を処方されるだけというパターンもあるでしょうし、医師との相性なども大きく関わってくるだろうと思います。それにこの弟の「入院させろ」という言葉も、兄の全快を祈ってのことではなく、これ以上関わりたくないという気持ちからのものです。
これらの希望のない状況の中で父親が出した答えは、尊いものではあっても観客に幸福感を与えるものではありません。
この映画が完結するとしたら見る人それぞれの中でそれぞれに違う完結の仕方をするでしょうし、時には非常に長い間未完のまま続いていくのだろうと思います。

17409851_1037138403053931_1317791512_n.jpg『52Hz, I LOVE YOU』ポスターです

⑤ 『52Hz, I LOVE YOU』

『海角七号 君想う、国境の南』、『セデック・バレ』のウェイ・ダーション(魏徳聖)の新作が上映されました。ラブコメタッチのミュージカル映画です。設定はバレンタインの日ですが風景が全然寒そうではないのはさすが台湾です。日本とはずいぶん違いますね。
中華圏のバレンタインは日本と違って女性が男性にチョコを送るのではなく、男性が女性にバラを送ることが多いようです。映画の中でもバラの配達が一つの大きなイベントになっています。
 バレンタインの朝から夜までの中で、複数の男女の恋愛模様が登場します。
花屋の小心は33歳になってもパートナーがおらず、バラを配達しながら孤独な気持ちでいる。パティシエの小安は蕾蕾が好き、だけど彼女にはバンドマンの大河という彼が…。一方その大河はバレンタインの夜に蕾蕾にあることを打ち明けてプロポーズするつもりが、稼ぎのない大河との関係に疲れた蕾蕾から別れを切り出されてしまう。
バラの配達中の車の故障、小心の弟のいい加減な店番、蕾蕾と大河の別れ話、なぜか突然高級レストランで食事をすることになった小心と小安のお会計問題など、すべてのトラブルが結果的にはハッピーエンドに繋がるという内容で、楽しい気持ちで観ることのできる映画でした。
 ウェイ・ダーションは過去作では何かしら台湾と日本との関係を描いていましたが、本作はその辺のエピソードはなく「愛とお金」がテーマのラブコメという印象でした。
 監督は同性婚支持を表明しており、作品の中でも同性婚カップルが出てくるので、今まさに法制化に揺れる台湾において描きたかったテーマなのかもしれません。 
話の途中で本物の台北市長が市長の役でちょこっと登場していたり、過去作のキャストが出演していたりするので、詳しい人はその辺も楽しめるかもしれません。
 残念ながら私が見たのはゲストの登壇がない回でしたが、自分にとっての初日のラスト一本がハッピーな作品で、良い締めでした。

17440284_1037139869720451_1701869886_n.jpg『姉妹関係』ポスター

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↑トークの様子 左から司会のリム・カーワイ、トレイシー・チョイ監督、リン役のジェニファー・ユー、セイ役のフィッシュ・リウです

17440336_1037140403053731_106084065_n.jpgジェニファー・ユー

17440450_1037140516387053_942908821_n.jpgフィッシュ・リウ

17439459_1037140709720367_870406417_n.jpgトレイシー・チョイ監督

⑥ 『姉妹関係』
二日目の一本目です。あまり目にする機会のないマカオ映画。
 孤児院出身でマッサージ店で働き始めたセイは、姉御肌のリンと親友になる。リンはやがて父親の分からない子供を身ごもってしまい一度は堕ろそうとするものの、セイから二人でなら育てられる、私たちで一緒に育てようと言われ出産を決意。セイはこのままずっとリンと一緒にいたいと思っていたが…。
 主演のフィッシュ・リウが「来るべき才能賞」を受賞しましたが、マッサージ店のコスチュームがすごくかわいくて似合っていて、セクハラ的なサービスを要求されてもすぐに「もっとチップを稼ぐにはどうすればいいか」と順応していく姿を明るく逞しく演じていました。
 この作品はゲストに監督のトレイシー・チョイだけでなくフィッシュ・リウ、ジェニファー・ユーも来ておりとっても華やかでした。
 マカオ返還の日の熱狂ムードと裏腹にリンとセイが悲しく別れるシーンの対比について、「その後の中国とマカオの関係を意識したもの?」という質問が出ましたが、監督からは「ご想像にお任せします」との言葉がありました。個人的には特にそれを強く意図したわけではないように思います。
 息子のロクを通じて語られる、リンの「誕生日はいつもモンテの砦に」「そこが一番大切な人との思い出の場所だから」というセリフは泣けます。

17410138_1037143793053392_455936268_n.jpg『七月と安生』ポスター

⑦ 『七月と安生』
ラスト一本でした。これも『姉妹関係』と同じく女性同士の親密な友情を描いたものですが、時に激しく対立しながらも最後には相手のことがやはり大事だという関係性は『姉妹関係』とはまた違う激しさがありました。男性の登場で二人の関係性が変わってくる点は似ているかもしれません。
優等生の七月と自由奔放な安生。まったく正反対の性格ながら(だからこそ?)親友同士になった二人。やがて七月は蘇家明と恋に落ち、同じ大学に進学、安生はギタリストと一緒に故郷を飛び出した後流転の生活を続ける。その後再会を果たすも、価値観の違いや安生と家明の関係等を巡って次第に二人の仲は変化し…。
優等生に見えても自由への憧れや親や家明との葛藤を抱えて悩む七月と、やりたい放題で転落していくかに見えても心にはいつも七月を気にかけ、最後には自分の人生を掴む安生の対比が見ていて切ないものがあります。
基本的には劇中劇ともいえる『七月と安生』というネット小説に沿って話が進んでいきますが、その小説に描かれることのなかった真実が安生の回想の形で明かされて映画は幕を閉じます。
主題歌の『It's Not A Crime, Its Just What We Do』を歌うのはフェイ・ウォンの娘のリア・ドウ、劇中歌にはフェイ・ウォンの『浮躁』が出てきたりします。
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