『世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集』 佐藤広一監督

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↑こちらで紹介いただいた大杉漣さんが最後にナレーションを担当した映画「世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集」の新潟上映会に足を運びました。
映画は1976年10月29日に起きた酒田大火の火元となった映画館“酒田グリーンハウス”について記録。
地方にありながら大変モダンな映画館としてかの淀川長治先生も賞賛した映画館の姿を資料と貴重な映像で再現しておりましたが、観ててこの劇場がまず特筆だと思ったのは大ホールの他に別館としてシネマサロンと称し客席数が僅か10席ほどの小ホールも併せ持ち、そこではきちんと35㎜の映写機で昔上映した映画を安価で観せていたそうで、当時のまだお金がない若者は大変有難かったようですが、いわば洋画専門として大都市とライムラグなく新作を公開してたほか、名画座の機能も持ってたようで、映画館がその街の文化度のバロメーターになるようだったら、この酒田グリーンハウスは先見性とともに飛びぬけた存在に思いました。
そして映画に登場するグリーンハウスの思い出を語る人たちは大火の出火元にも関わらず、
中には自宅が焼失してしまった上々颱風のメンバー(!)までが生き生きとその映画館の思い出を語ってたりするのを見てて、街の誇りでもあったことが伺えるほか、街づくりの観点からもその先駆性を賞賛する声も収めており、ひとつの映画館を巡っての街と人の記憶を辿った点でとても興味深く、また酒田大火がどのように酒田グリーンハウスから火が燃え広がっていったのか検証も、それは記憶に新しい糸魚川大火との重複も見うけ防災の側面からも様々なことを教えてくれたようでした。
大杉漣さんは先に山形のラジオ番組でこの劇場をテーマした番組のナレーションを手がけており、特に作品の中でこのグリーンハウスの館主・佐藤久一氏の映画館は観客ありきなことを謳う言葉が漣さんの声で響き、これは映画上映の末端にある自主上映会でも座右の銘にしたいと思ったほどでまた耳にしたいです。
ちなみに漣さんは昨年よりによって出火から41年たった同じ10月29日に同じ酒田の劇場・酒田港座で「ゴチになります」で手にした賞金を有効に還元したいと、ここで本作の上映とともに自身のバンドを率いてライブもやり、佐藤広一監督には山形で劇場公開されたときは舞台挨拶に来てくれることも約束していたそう。
よほどこの映画とともに酒田への思い入れが深かったようだと思いました。
その佐藤広一監督(画像)はにいがた映画塾の三期生として山形から来て学び、一番学んだこととして酒の飲み方と冗談めかしていましたが、それまで一人で映画を撮っていたのが映画塾で共同での映画つくりを学んだことを挙げててなるほどと思い手塚眞監督の新潟ロケ映画の大作『白痴』にも撮影助手で参加していたそうで、漣さんとの出会いもこのにいがた映画塾からで、繋がりや所縁について大切にする人じゃないかと思いました。
現在は山形で映像制作をフリーの立場でやっているそうで本作は山形国際ドキュメンタリー映画祭からの依頼で手がけることになったものの、当初は短編を頼まれたのが取材を進めていくうちにとても20分にはまとめられずに今の67分という尺になったそうです。
ただそれでもこの貴重な映画館を巡って、もっと素材は撮影しただろうなと思いました。
ほかに東京女子流の山形出身メンバーが出演する福祉映画も監督、これも関心を持ったりしましたが、特に驚いたのはドキュメンタリー映画『おだやかな革命』の撮影も手がけたことでした。以前にこの映画を長岡で観たいとリクエストがあったので脳裏に刻まれたのですが、こんな形で撮影監督にお会いするとは、というか山形在住でありながら地元出身のアイドルを起用して地元で福祉映画を監督したり、全国で劇場公開されるドキュメンタリー映画の撮影をしたり、そして本作のように大杉漣さんをナレーションに起用しながら自身の街と映画館の記録を綴り映画にしたりと、少なくとも新潟でそんなふうに映像で多岐にわたって活動している方は存じ上げてないので、佐藤監督、そして山形にも関心を持った次第です。
『おだやかな革命』は5月5日~5月18日までシネ・ウインドで公開されます。
http://odayaka-kakumei.com/
一時期、山形ケーブルテレビがおそらく儲けにならないと思われる全日本プロレスのスポンサーをしていたことがあり、その時に漠然と感じたヤマガタは国際的な映画祭を輩出するほどなので、なにか映像関係で何某の隆盛があるんじゃなかろうか、という思いを佐藤監督に挨拶とともにお話させて思ったりしました。
『おだやかな革命』に続き渡辺智史監督と佐藤広一監督(撮影)の新作『YUKIGUNI』
http://yuki-guni.jp/
余談ですが『世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集』のベースとなった単行本「世界一の映画館と日本一のフランス料理を山形県酒田につくった男はなぜ忘れられたのか」(岡田芳郎著)は講談社にも関わらず、現在は絶版となってるそうで佐藤監督は復刻を依頼してるそうですが、長岡の文信堂書店にはまだ1冊残っています。このブログを書いて文信堂に行ってまだあったら、前に図書館から借りて読んでたけど買っちゃおうかと思ったりしてます。
「世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集」 予告篇
https://www.youtube.com/watch?v=Nyi94VYPQtg
さらに余談ですがこちら↓で消息不明として触れた以前、お世話になったHさんが
http://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-1833.html
今回の上映会のお手伝いに参加していて、久しぶりに会うことができました。
Hさんは塾生でなく裏方としてにいがた映画塾に参加しているので、その絡みで来ているんだろうと思いましたが、風貌は変わってたもののお元気そうなんでお会いできて良かったです。
古町はもう何度も訪れてるのに会場のカフェ・パルムには始めて足を運んで、こんな隠れ家的で品のいい喫茶店があるんだとともに行って良かったと収穫でした。
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