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長岡アジア映画祭実行委員会!ブログ

新潟県長岡市で活動します長岡アジア映画祭実行委員会!です。

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アジアフォーカス福岡国際映画祭2013 前編 映画祭巡礼記

*S東京特派員の映画祭巡礼記。
いつもヴォリュームたっぷりですが、今回もなので今日と明日の二回に分けて掲載します。
インドの話題作「血の抗争」はぜひ完全版で公開してほしいものですが。
あとさりげなくLinQに触れてるのもS特派員らしいと思いました。

http://www.focus-on-asia.com/

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去る9月21から23日の3日間、福岡で開催されたアジアフォーカス福岡国際映画祭2013に行ってきました。今年の公式招待作品は22本。ふだんあまり見る機会のない作品を紹介するとともに今年の作品は話題作も多くアジア各国の映画界の今を知ることができる映画祭だったと思います。
それでは見てきた映画の感想を書いていきます。

「聖者の谷」12年インド・アメリカ映画 ムーサー・サイード監督
インドのカシミール地方にあるダル湖は外国からの観光客も多く訪れる美しい湖。だが政治的に不安定な土地でもあって観光客の案内で暮らしている主人公の青年は外国に出る機会を望んでいた。そんな彼がアメリカから湖の水質調査に来た女性を案内することになり、美しい湖が実は瀕死の状態であることを知る。サイード監督はアメリカ人ですが両親がカシミール地方の出身。親戚も多く暮らしているけどインド人とアメリカ人という違いはどうしてもあったようで、映画の中で外国に行くことばかりを考えている主人公に託してあなたたちの国はこんなにすばらしいんだ、守るべき価値があるのだと訴えているようでした。また自分のルーツの地であっても他者の視線から見ているためか戒厳令の街の緊迫した様子やと多くの人々が暮らす湖の日常をとらえた映像がまるでドキュメンタリーのように撮影されていて新鮮でした。

タイの大ヒット作「Pee Mak 」 のバンジョン・ピサンタナクーン監督
タイの大ヒット作「Pee Mak 」 のバンジョン・ピサンタナクーン監督

「Pee Mak(原題)」13年タイ バンジョン・ピサンタナクーン監督
今年タイで大ヒットした作品が登場。なんとタイの歴代興行成績を塗り替えて第1位になってしまったとか。タイの有名な怪談「メーナーク・プラカノーン」をコメディとして映画化した作品です。有名な怪談をなぜコメディに?と疑問だったのですが実は主人公の男4人組が出演する短編が先にあり、大人気のそのキャラクターを使って長編映画を作るというふうに企画がスタート。それにふさわしい題材として有名な怪談が選ばれたということの様です。主演のマーリオー・マオラーは過去の出演作「サイアム・スクエア」が公開されて中華圏では絶大な人気を持つタイ俳優。映画としてはこの4人が古典的な怪談をどれだけ壊すかが見どころだと思うのですがそうとうローカルなネタも多いようで、そのすべてがわからないのがちょっと見ていてもどかしかったですね。18世紀末の話なのにセリフに映画の話題が出てきたり、村祭りでは電飾で飾りつけられたりと時代考証無視なところが面白かったです。

「狂舞派」ポスター「狂舞派」ポスター

「狂舞派」13年香港 アダム・ウォン監督
今年のアジアフォーカスで観客賞を受賞しただけあって私が見たのは3回目の上映ですが場内ほぼ満席。有名なスターが出ているわけでもないのにすごいです。想像ですが福岡はHKT48やLinQなどアイドルグループも多数存在するし、こういったストリート・ダンスに関心を持つ人も多く、アジア映画ファン、香港映画ファン以外もこの映画を関心を持つ多くの人が上映にかけつけたのではないでしょうか。また主人公たちの見せるダンスシーンも香港映画らしくアクション風に撮られていて迫力もあり素晴らしかったし、最後にはかなりドラマチックな展開もあるので見た人は感動したのだと思います。長岡アジア映画祭では聴覚障害を持つ主人公がダンスに打ちこむ「あぜみちジャンピンッ!」が上映されましたが、この映画にも障害を越えてすごいダンスを見せるところがあり私も感動しました。

「血の抗争」ポスター「血の抗争」ポスター

「血の抗争 パート1」「血の抗争 パート2」12年インド アヌラーグ・カシャブ監督
インド映画は変わってきたとここ数年言われてきましたが実際に映画祭などで上映される「新しいインド映画」というのを見ても目先の新しさを追求しているだけに見え、むしろ3時間以上ある昔ながらの歌と踊りたっぷりな映画ながら学歴社会の競争の中に苦しむ若者たちの悩みと友情を描いた「きっとうまくいく」のほうがよほど新しいと思っていたのですが、ほんとうにインド映画もいろいろと変わってきたのだなあと感じさせる傑作でした。
簡単にいえばギャング映画で、ある地方で二つのファミリーの親・子・孫の三世代にわたる抗争を描いた大河ドラマで、インド版「ゴッドファーザー」+「スカーフェイス」+「グッドフェローズ」とでもいいましょうか。上映時間の長いインド映画の中でも前篇・後編合わせて5時間20分という大長編。20世紀のインド現代史を背景にしたスケールの大きい大河ドラマで登場人物は膨大すぎて全部把握しきれないほど。そしてインド映画の検閲の基準が変わったのか、これまでにはないすさまじいバイオレンス描写。女も容赦しないのもすごいですが、でも女性がまた強くて男に負けてない。この女性描写も新しかったです。音楽・ダンスシーンの不自然さもなく(サービスのように唐突に始まったりしない)、それどころか常に歌や音楽が絶え間なく流れて映画のテンションをあげていて、逆にインド映画に歌や踊りが不可欠だということを実感させてくれました。いろいろありすぎて全部書ききれないですがとりあえず必見でしょう。あの大長編「セデック・バレ」が完全版で公開されたのですからこの作品もぜひ日本で公開してほしいです。

「スター誕生」11年シンガポール ミッシェル・チョン監督
芸能界に憧れマレーシアの田舎からシンガポールに出てきた女の子がチャンスをつかむべく奮闘するコメディ。ミッシェル・チョン監督はシンガポールの人気女優でかわいらしいけど美人というほどではない主人公を演じているのは監督本人。メイクや演技もあるのでしょうがあまり垢ぬけない田舎くさい感じがはまっています。主人公が挑むコンテストが「エキストラ・コンテスト」というのも泣けます(一位の賞品は10年間のエキストラ契約。それってうれしいのか)。コメディではあるけれども女性の成長を描いたドラマ。ラストの着地もちょっとほろ苦いですがうまいと思いました。

インド映画「シャンハイ」ポスター 上海が舞台ではありません。
インド映画「シャンハイ」ポスター 上海が舞台ではありません。

「シャンハイ」12年インド ディバーカル・バナルジー監督
知事と大企業が結託した再開発が進むある地方都市。再開発反対運動支援のため再三の脅迫を無視しアメリカの人権派の大学教授がやってくるが…
バイオレンス描写ありでも「血の抗争」とはまた違ってこちらは実録タイプの政治スリラー映画。コスタ・ガヴラスの「Z」の翻案で軍事政権ならぬ政治と企業の癒着がテーマですがインドの政治家は政治家というよりまるで企業の経営者で、企業の誘致や経済的な繁栄が目的になっている。それを阻むものは愛国心がない、と決めつけられる。権力者が決めた流れに逆らうことが容易ではない社会が登場人物の上に重くのしかかる。そのうえこの映画は「正義」の側の登場人物も単純な善人はひとりもいない。人権派の大学教授は女好きだし、かつての教え子は元不倫関係、真相をさぐるカメラマンはふだんはポルノビデオを撮っているしがない独身中年、事件の捜査を任されたエリート検事は出世と引き換えに事故として処理するように圧力を受ける。権力に対しものすごく弱いように見える彼らなのでようやく真相に辿り着いたのに結局葬られてしまいそうになったその時、意外な形で「正義」が行われる。これには感動しました。またこの映画、音楽もすばらしかったです。ちなみにタイトルの「シャンハイ」は「我々はムンバイを上海のようにするのだ」といった元インド地方長官の演説から取られていて中国の上海が出てくるわけではありません。
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