花束とナイフ

「私が取材先の立場だったら『嫌』と感じることはしないようにしています。相手が心地いいと思える距離で相手の心に寄り添い、信頼されるような記者とは、と客観的に考えながら行動しています」
https://jj-jj.net/lifestyle/151688/
↑つい最近、とある理由で炎上してしまった報道記者、それも政治部総理番記者のコメント。
取材相手が芸能人ならともかく、権力の監視という報道人最大の使命を放棄したようなコメントで、
最高権力者に最も近い記者がこんな心構えでは触れてほしくない嫌がるような突っ込んだ質問などできず、
権力者は余計にやりたい放題なのが今の現状の要因のひとつではないかと。
この記者は早稲田大学卒→フジテレビ入社だそうで、
モロに大島新監督と同じコースだからというわけではありませんが、
『香川1区』の中で平井卓也議員に対して、監督の取材の信条である「花束とナイフ」
口癖の「なるほど なるほど」と相槌を打ち相手を称賛しながら、
ここぞという場面で鋭く斬っていく場面を観てほしいと思いました。
大島新監督は森達也監督の『A』を観て大きな衝撃と影響を受けたそうですが、
願わくばこのいわゆる美人記者さんも『香川1区』を観て心構えを改めていただきたいと余計なお世話ですが。
ついでに昨日書いた『裸のムラ』でもなぁなぁな質問を投げかける記者会見で
五百旗頭幸男監督が鋭く馳浩知事に斬り込む場面があったので、
サイン会の時にこの総理版のコメントを読んでもらいましたが、
日々、真剣勝負で挑む立場からすれば呆れるしかないんだろうと話してて思いました。
あと『香川1区』の中で「報道とドキュメンタリー映画は違うだろ!」とキツイ言葉を受ける場面があり、
ここで大島監督は押し黙ってしまうように見えましたが、
映画を観れば一市民が香川のマスコミに訴えたら握りつぶされるからと、
大島監督のもとにネタを提供する場面があり、これは香川のマスコミ以上に報道の使命を担ってる映画だと。
1/7 『香川1区』長岡上映と大島新監督講演
http://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-3576.htm
監督プロフィール
大島新(おおしま・あらた)
ドキュメンタリー監督、プロデューサー。
1969年、
神奈川県藤沢市生まれ。
1995年、早稲田大学第一文学部卒業後、フジテレビ入社。
「NONFIX」「ザ・ノンフィクション」などドキュメンタリー番組のディレクターを務める。
1999年、フジテレビを退社、以後フリーに。
MBS「情熱大陸」、
NHK「課外授業ようこそ先輩」「わたしが子どもだったころ」などを演出。
2007年、ドキュメンタリー映画『シアトリカル唐十郎と劇団唐組の記録』を監督。
同作は第17回日本映画批評家大賞ドキュメンタリー作品賞を受賞。
2009年、映像製作会社ネツゲンを設立。
2016年、映画『園子温という生きもの』を監督。
2020年、映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を監督。同作は第94回キネマ旬報文化映画ベスト・テン第1位となり、文化映画作品賞を受賞。
2020年日本映画ペンクラブ賞文化映画部門2位、第7回浦安ドキュメンタリー映画大賞2020大賞、日本映画プロフェッショナル大賞特別賞を受賞した。
プロデュース作品に『カレーライスを一から作る』(2016)、『ぼけますから、よろしくお願いします。』(2018)
など。
文春オンラインにドキュメンタリー評を定期的に寄稿している。
なぜ『香川1区』なのか
大島 新
タイトルは、映画を観るときの補助線になる。前作『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、小川淳也の17年間にわたる記録だが、このタイトルをつけたことによって観客はその視点から映画を観ることになる。これが『ある野党政治家の17年』というタイトルだったら、また違う印象を与えただろう。
さて、『香川1区』である。続編とうたいつつも、前作とはまったく異なる無機質なタイトルにしようと当初から考えていた。そしてタイトルは、観る側だけでなく、取材する側の姿勢をも規定する。『香川1区』と決めたからには、小川陣営だけの取材でいいはずがない。むしろ、選挙で勝ち続け、小川にとっては高い壁となっている平井卓也陣営や自民党支持者の在り様をきちんと描かなければ、と考えた。取材によって見えてきたのは、おそらくは日本中の選挙区で見られるであろう、自民党の底力であった。その力の源泉には、なるほどと思うこともあれば、これが民主主義と呼べるのか、と言いたくなるような側面もあった。
そうした自民党の強さを上回るには、魅力的な野党候補と、その人をサポートする支持者たちの熱量しかない。10月31日の午後8時、歓喜の小川事務所で、私は「これは小川の勝利というよりも、支持者たちの勝利だ」と感じていた。
結末はわかっているドキュメンタリーなのだが、2021年6月から本格的に始めた取材は、「これでもか」というくらい様々なことがあった。特に10月の1か月間は、怒涛の日々だった。前作では、私たちは取材者であり、記録者であったが、本作では期せずして「当事者」にもなっていった。その過程も、すべて盛り込んだ。完成した映画の尺は156分。私は自分が観客の場合、2時間を大幅に超える映画には行きたくないと考えるタイプだ。そんな私なのに、2時間半を超える映画を作ってしまった。「そこで何が起きていたのか」を真摯に表現するために、これでもぎりぎりに絞り込んだ結果である。表面上の主人公はもちろん小川淳也であり、対抗馬の平井卓也と町川順子も当然ながら重要な存在だ。だが私の中では、「この映画の真の主人公は有権者だ」という思いが日に日に強くなっていった。そしておそらくは、日本中に『香川1区』は存在するはずだ。
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