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長岡アジア映画祭実行委員会!ブログ

新潟県長岡市で活動します長岡アジア映画祭実行委員会!です。

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前向く兆しを撮りたくて 

©KOMORI HARUKA

被災地の風景に聞く 〈上〉

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東日本大震災から12年を迎える被災地を記録してきた映像作家小森はるかさんが思いをつづる。

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 前向く兆しを撮りたくて 

 今年の3月11日は、十三回忌に当たる命日だ。それに気付き、私は七回忌を迎えた岩手県陸前高田市を思い出している。震災後、ボランティアをきっかけに訪れた陸前高田に3年ほどいさせてもらった。暮さなければ見えなかった日々、風景。たとえば目に見えなくとも、人々のそばにあるものをきろくしたくてカメラを向け続けてきた。
 そんな中で作り始めたのが「空に聞く」という映画だった。主人公は陸前高田災害FMのパーソナリティーを務めていた阿部裕美さん。阿部さんの「聞く」姿に引かれて撮影を始めたが、良き聞き手だからこそ、まちの人々が胸の奥で感じていることを言葉にしてくれる人でもあった。
 2017年、12㍍の高さまでかさ上げされた市街地に、復興の象徴ともなるショッピングモールがオープンした。あまりの真新しさに私は戸惑ったが、阿部さんは「新しい地面に上がれば、みんながいる空に近づけるかもしれない」と話してくれた。亡くなられた人たちとの距離で変わりつつあるのは、きっと七回忌を迎えたからだとも教えてくれた。「忘れたとか、踏ん切りついたとかじゃなくて、ちょっと前を見るようになった」と。
 そんなふうに、過去と現在が保ちながら前へ進んでいく兆しを映画にしたかった。ラジオからまちに届いてた声たちとともに。阿部さんは震災前にご夫婦で営んでいた小料理屋を再建され、おかみさんとしての生活の戻られた。その姿で映画は終わる。
 エンドロールで映し出されるのは、阿部さんが好きだという店の勝手口からの眺めだ。窓からは野球の練習する子供たちの声に、工事音も交ざって聞こえてくる。
 殺風景に思う人がいるかもしれない。けれど不思議と何年たってもあせずに、映画を見てくれた人にちゃんと届いてるようだ。それはこの風景が、震災だけでなく人生のあらゆる経験からちょっと前を向くまでの時間と、どこかで重なるかもしれない。
 十三回忌にはどんなことが語られるだろうか。お店の中でその声たちに耳を預けている阿部さんの姿を想像しながら、各地で「空に聞く」を上映する旅を続けている。

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 こもり・はるか 1989年静岡県生まれ、新潟市在住。東京芸術大大学修士課程修了。
監督作に「息の跡」など。「空に聞く」は12日に長岡市で上映予定。

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3月3日付の新潟日報文化欄で小森はるか監督が『空に聞く』とともに東日本大震災について寄稿していたので転載しました。

3月12日 『空に聞く』長岡上映会
http://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-3638.html
 
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