劇場版 『荒野に希望の灯をともす』長岡上映会に届いた谷津賢二監督のメッセージ。

3月25日 劇場版『荒野に希望の灯をともす』長岡上映会。
上映前に谷津賢二監督より届いたメッセージをシンクタンク・ザ・リバーバンクの方より、読み上げていただきました。
上映後、お客様よりあの監督からのメッセージも素晴らしくぜひ仲間に紹介したいと言われたので、
シンクタンク・ザ・リバーバンクより谷津監督に承諾を依頼しこちらに掲載いたします。
谷津監督、ありがとうございました。
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長岡上映会の皆様へ。
本日は上映会に足を運んで下さったこと、まずは皆さんに御礼を申し上げます。ありがとうございました。私は本作の撮影と監督を務めました、日本電波ニュース社の谷津賢二と申します。皆さまの前でご挨拶出来ないことは誠に残念ですが、上映会を主催してくださる「長岡アジア映画祭実行委員会」「シンクタンク・ザ・リバーバンク」の方々にこのメッセージを託し、一言、皆さまにご挨拶を申し上げます。
私が中村哲先生に出会い、最初の取材を行ったのは1998年4月、そして最後の取材は2019年5月のことでした。その21年の間、私は25回アフガニスタンに入国し、現地滞在日数はおよそ450日にもなりました。そして何よりも中村先生とアフガン人の活躍を収めた映像が、およそ一千時間、私どもの手元に遺されました。こうした映像を使い、これまでも主にNHKで放送されたドキュメンタリー番組や、まさに皆さまに観ていただいた、この映画などを制作してまいりました。
昨年の今頃、私はこの映画の編集をしておりました。その時には既に、私も皆さんも人間が等しくコロナ禍にさいなまれていました。そして皆さんもご承知かと思いますがコロナ禍はたくさんの「分断」や「孤立」を生み出していました。感染を警戒し、病気で入院中の家族や友人に会えない人、同じ理由で故郷に帰れない人、大学進学で一人暮らしを始めても、リモート授業ばかりで、一人の友人も出来ず、アパートで孤独に過ごす若者など、こうした分断と孤立でした。そんな中で私は映画によって、中村先生の生き方の中で何を皆さんに伝えるべきか…長く考え続けました。結果、私が皆さんに最もお伝えすべきことだと思ったのは「他者とどう関わって生きるのか?」という中村先生の生き方でした。さらに突き詰めて言えば「利他に生きる」ということでしょうか。もはや「自国ファースト」「自民族ファースト」「自分ファースト」などという考え方では生き残れない世界に私たちはいるのではないかと思うのです。そんな今だからこそ中村先生が私たちに問いかける「他者とどう関わって生きるのか?」という生き方が大切であり、輝くのだと感じています。中村先生はかつてペシャワール会会報にこんな言葉を遺しています。
『己が何のために生きているかと問うことは徒労である。人は人のために働いて支え合い、人のために死ぬ。そこに生じる喜怒哀楽に翻弄されながらも、結局はそれ以上でもそれ以下でもない』
人のために生き、人のために死んだ中村先生の原点のような言葉です。しかし「人のために生きる」などと口で言うのは簡単ですが、なかなかできる生き方ではありません。中村先生はそんな私たちを更に励ましてくださる考えを遺してくれています。それは、中村先生がよく口にした座右の銘「一隅を照らす」です。一つの隅を照らすと書いて「一隅を照らす」。これは天台宗の開祖、最澄の言葉です。中村先生はこの言葉をこう紐解いていました。「だいそれたことを考えずに、自分が置かれた場所で自分が出来ることを一生懸命する、一人一人がそんな考えで生きれば、少しずづ社会が変わって行くのではないでしょうか。例えば虐められている友達がいれば、かばってあげる、お母さんが体調が悪い時には変わってご飯を作って上げる…こんなことが一隅を照らすなんだと思います」と。
中村先生が示したこうした生き方の中にこそ「希望」があるのだと思います。それは名誉や富とは関係なく、それでも心から私たちを励ますものだと確信しています。
映像に残る中村先生の優しい笑顔、火が出るような気迫のこもった顔、そして哲学者の様な思慮深い顔を心にとどめ、不穏な世情を乗り越える力として下さい。この映画がそんなことのお役に立てるのなら、製作者としてこれ以上の望みはありません。
皆さま、本日は本当にありがとうございました。心からの御礼を申し上げます。
日本電波ニュース社
谷津賢二
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