第9回大阪アジアン映画祭 前編 映画祭巡礼記
S東京特派員の映画祭巡礼記。
今回は毎年3月に開催し年々スケールアップしている『大阪アジアン映画祭』を二回に分けてお届けします。
S特派員ありがとうございます!
http://www.oaff.jp/2014/ja/index.html
今年も大阪アジアン映画祭に行ってきました。
2010年から見に来てますが当時はだいたい週末2日で上映作品の半分ぐらいは見れたものですがだんだん規模が大きくなってきて今年は「コンペティション部門」「特別招待作品部門」のほか、特集企画もふくめたらなんと43作品。日本の中でもかなり大きな映画祭だと思います。今回も2日間行ってきましたが2日じゃぜんぜん足りなかったですね。
上映作品ですが、国別では日本10、台湾11(日本、ミャンマー合作を含む)、香港4、フィリピン5、韓国3、インドネシア、タイ、マレーシア、インド、中国、アメリカ、ドイツが1本ずつでした。特集が組まれている台湾、香港を除くとフィリピンが多くて勢いを感じさせます。
「すご~い快感」Q&Aの様子
まず最初に見たのはタイ映画「すご~い快感」(タイワーリン・スカピシット監督)。日本人ロック歌手の熱烈なファンである女の子がプロモーションビデオの出演者に選ばれて起こる恋の騒動を描いた偶像劇。片思いの連鎖が続くのはまるで日本の「ハチミツとクローバー」みたいですが異性だけの恋愛じゃないのがタイ映画らしかったです。また日本人歌手役には実際にタイで活動している越中睦士が演じていたり、日本ロケもされていて(渋谷駅のハチ公前交差点!)またキャラクター的には悪役の役回りのロック歌手がそんなに悪くは描かれてないあたりにタイ映画のやさしさと日本への親近感を感じた映画でした。
またタイで人気の若手俳優たちが出演しているのも本作の見所。なかでもヒロインの親友役を演じていたスパナート・チッタリーラーさんは日本ではアジアンクィア映画祭で上映された「ジェリー・フィッシュの恋」とその続編で知られる女優さんですが、映画の上映前に監督とヒロインのボーイフレンドを演じたセータポン・ピヤンポーさんとともに登場、上映終了後に行われたサイン会ではいつまでも観客にとりかこまれていて大人気でした。
「ローラーコースター」ポスター
2本目は韓国映画「ローラーコースター」。日本に進出した韓国スターがスキャンダルを起こし韓国に帰国することに。ところが乗った飛行機が悪天候のため着陸できず、燃料がなくなり墜落の危機に!主人公は飛行機恐怖症に加え自分のスキャンダルの心配、それに奇妙な乗客たちに悩まされ追い詰められていく…という飛行機パニックコメディ。おかしな乗客(乗務員も)たちやいつまでたっても目的地につけない不条理感などがたまらなくおかしく、元は舞台劇なんじゃないのかと思わせるほど完成度の高いコメディでした。監督はスター俳優のハ・ジョンウ。これが長編第1作目だそうで、監督としてもこれからが楽しみ。主演はチョン・ギョンホに任せ自分は監督に徹しているあたり監督に賭ける意気込みが感じられました。
この作品は大阪アジアン映画祭「来るべき才能賞」受賞を受賞さました。
「シフト」ポスター
次はフィリピン映画の「シフト」。この映画のシージ・レデスマ監督もこれが初監督作品。ヒロインはミュージシャンか写真家を夢見ているものの母子家庭で母親は出稼ぎ、まだ学生の妹と同居している身分。大学は出たものの就職先はなく、24時間電話オペレーターのバイトをしつつ就職活動をしています。そこでチームを組んで仕事をするわけですが(それがタイトルの由来)最初の自己紹介の中でさりげなく自分の性がわかるように話ているのが印象的でした。あからさまでにはいわないのにそこでこの人はゲイだとか、トランスジェンダーだとかがわかるのとそれを誰も気にしないというのが新鮮でした(でもその後ヒロインはゲイの同僚に恋して悩むことに…)。また映画の最初と最後でほとんどヒロインが置かれた立場がかわってないあたりにフィリピンの若い世代の状況が垣間見れるようでした。ヒロインを演じているイェング・カーンスタンティーノーは歌手だそうで、個性的な赤い髪も含めてかわいらしく魅力的でした。
この映画は大阪アジアン映画祭コンペティション部門でグランプリを受賞しました。今秋一般公開されるそうです。
「甘い殺意」リエン・イーチー監督
「甘い殺意」台湾映画。勝気な新人女性刑事とやる気ゼロの先輩刑事のでこぼこコンビが連続殺人事件の謎を追うミステリードラマ。監督のリエン・イーチーは2011年の東京国際映画祭で「運命の死化粧師」が紹介されてます。「運命の死化粧師」はヒロインが死化粧師なのですが、彼女がかつての恩師の死の謎を追うという推理映画でした。今回監督のQ&Aを聞いているとあまり作られることがない推理映画をもっと盛んにしたいという思いがあるようです。推理ものは映画ではなかなかむずかしいジャンルでそもそもあまり映画向きではないと思うのですが、そこにあえて挑んでいく意欲はすばらしいと思いました。この映画も本質的なドラマは犯人の側にあって、探偵に相当するヒロインたちは傍観者にすぎないという推理ものの宿命からは逃れられていないと思いましたがヒロイン役のアリエル・リンはかわいかったし、先輩刑事との仲も気になる終わり方。このキャラクターのその後を描いた映画も見たいな、と思わせる映画でした。シリーズ化期待したいです。
(続きは明日)
今回は毎年3月に開催し年々スケールアップしている『大阪アジアン映画祭』を二回に分けてお届けします。
S特派員ありがとうございます!
http://www.oaff.jp/2014/ja/index.html
今年も大阪アジアン映画祭に行ってきました。
2010年から見に来てますが当時はだいたい週末2日で上映作品の半分ぐらいは見れたものですがだんだん規模が大きくなってきて今年は「コンペティション部門」「特別招待作品部門」のほか、特集企画もふくめたらなんと43作品。日本の中でもかなり大きな映画祭だと思います。今回も2日間行ってきましたが2日じゃぜんぜん足りなかったですね。
上映作品ですが、国別では日本10、台湾11(日本、ミャンマー合作を含む)、香港4、フィリピン5、韓国3、インドネシア、タイ、マレーシア、インド、中国、アメリカ、ドイツが1本ずつでした。特集が組まれている台湾、香港を除くとフィリピンが多くて勢いを感じさせます。

まず最初に見たのはタイ映画「すご~い快感」(タイワーリン・スカピシット監督)。日本人ロック歌手の熱烈なファンである女の子がプロモーションビデオの出演者に選ばれて起こる恋の騒動を描いた偶像劇。片思いの連鎖が続くのはまるで日本の「ハチミツとクローバー」みたいですが異性だけの恋愛じゃないのがタイ映画らしかったです。また日本人歌手役には実際にタイで活動している越中睦士が演じていたり、日本ロケもされていて(渋谷駅のハチ公前交差点!)またキャラクター的には悪役の役回りのロック歌手がそんなに悪くは描かれてないあたりにタイ映画のやさしさと日本への親近感を感じた映画でした。
またタイで人気の若手俳優たちが出演しているのも本作の見所。なかでもヒロインの親友役を演じていたスパナート・チッタリーラーさんは日本ではアジアンクィア映画祭で上映された「ジェリー・フィッシュの恋」とその続編で知られる女優さんですが、映画の上映前に監督とヒロインのボーイフレンドを演じたセータポン・ピヤンポーさんとともに登場、上映終了後に行われたサイン会ではいつまでも観客にとりかこまれていて大人気でした。

2本目は韓国映画「ローラーコースター」。日本に進出した韓国スターがスキャンダルを起こし韓国に帰国することに。ところが乗った飛行機が悪天候のため着陸できず、燃料がなくなり墜落の危機に!主人公は飛行機恐怖症に加え自分のスキャンダルの心配、それに奇妙な乗客たちに悩まされ追い詰められていく…という飛行機パニックコメディ。おかしな乗客(乗務員も)たちやいつまでたっても目的地につけない不条理感などがたまらなくおかしく、元は舞台劇なんじゃないのかと思わせるほど完成度の高いコメディでした。監督はスター俳優のハ・ジョンウ。これが長編第1作目だそうで、監督としてもこれからが楽しみ。主演はチョン・ギョンホに任せ自分は監督に徹しているあたり監督に賭ける意気込みが感じられました。
この作品は大阪アジアン映画祭「来るべき才能賞」受賞を受賞さました。

次はフィリピン映画の「シフト」。この映画のシージ・レデスマ監督もこれが初監督作品。ヒロインはミュージシャンか写真家を夢見ているものの母子家庭で母親は出稼ぎ、まだ学生の妹と同居している身分。大学は出たものの就職先はなく、24時間電話オペレーターのバイトをしつつ就職活動をしています。そこでチームを組んで仕事をするわけですが(それがタイトルの由来)最初の自己紹介の中でさりげなく自分の性がわかるように話ているのが印象的でした。あからさまでにはいわないのにそこでこの人はゲイだとか、トランスジェンダーだとかがわかるのとそれを誰も気にしないというのが新鮮でした(でもその後ヒロインはゲイの同僚に恋して悩むことに…)。また映画の最初と最後でほとんどヒロインが置かれた立場がかわってないあたりにフィリピンの若い世代の状況が垣間見れるようでした。ヒロインを演じているイェング・カーンスタンティーノーは歌手だそうで、個性的な赤い髪も含めてかわいらしく魅力的でした。
この映画は大阪アジアン映画祭コンペティション部門でグランプリを受賞しました。今秋一般公開されるそうです。

「甘い殺意」台湾映画。勝気な新人女性刑事とやる気ゼロの先輩刑事のでこぼこコンビが連続殺人事件の謎を追うミステリードラマ。監督のリエン・イーチーは2011年の東京国際映画祭で「運命の死化粧師」が紹介されてます。「運命の死化粧師」はヒロインが死化粧師なのですが、彼女がかつての恩師の死の謎を追うという推理映画でした。今回監督のQ&Aを聞いているとあまり作られることがない推理映画をもっと盛んにしたいという思いがあるようです。推理ものは映画ではなかなかむずかしいジャンルでそもそもあまり映画向きではないと思うのですが、そこにあえて挑んでいく意欲はすばらしいと思いました。この映画も本質的なドラマは犯人の側にあって、探偵に相当するヒロインたちは傍観者にすぎないという推理ものの宿命からは逃れられていないと思いましたがヒロイン役のアリエル・リンはかわいかったし、先輩刑事との仲も気になる終わり方。このキャラクターのその後を描いた映画も見たいな、と思わせる映画でした。シリーズ化期待したいです。
(続きは明日)
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