逝きし世の面影 ~大崩にて34~

「この夏は40日連続で雨が降らなかった」
年に二回の大崩のご主人宅での田んぼ仕事のお手伝い。
本日無論、鎌を手にしての稲刈りへと赴きました。
が冒頭のようにご主人は嘆ながらも、
皮肉にも二、三日前から大雨が降り注ぎ、
田んぼはぬかるんで場所によっては歩くのが困難、
それでも本日は朝は雨が降ったものの次第に止んでいき、
曇り空で陽が注がないため気温も暑くならず、
これでぬかるんでなければ捗ったものの、
いつもよりこの日は参加者が集まらず、
予定ほど稲刈りは進まなかったのに、
ご主人は参加者全員にお礼の言葉を述べておりました。
11月11日の『百姓の百の声』上映会、以前にも書きましたが
柴田昌平監督は全国での上映会に赴いた際、地元の農家の方と、
上映後に座談会を開催し百姓の言葉に耳を傾けます。
担当者が最も身近に思う百姓というとこのご主人が思い当たるので、
真っ先にこんな話がと相談して登壇していただくことを快諾してくださいました。
最も映画のチラシを読んで「俺はこの映画に出てくるプロと違うからなぁ」と述べてましたが、
確かにサラリーマン生活を終えて長岡からこの大崩の山中に移住、
農業の先輩たちから学び(その中には偶然というのか柴田監督のお仲間も)、
見よう見まねで始めた農業なのですが、
この地で映画上映会や読書会を企画したり、
さらに最近は田んぼをやりたいとやってきた若者たちに実践指導するなど、
ご主人なりの農業をもう10年続けてきて、その体験から得られた経験は、
農業のプロとは違う視点からお話しできるんじゃないかと思います。
ちなみに『大崩・山村に生きる会』会報と称してノートに細かい直筆で4ページに渡り、
近況報告や最近読んだ本についての考察をニュースレターとして知人・仲間に郵送したりしてますが、
ちょっと難解で理解できないほど晴耕雨読を実践、
山村の片隅から世界と対峙しているように思ったりします。
さらにご主人を知る誰もが口を揃えて読書家と評し、
小林茂監督には渡辺京二 の「逝きし世の面影」を推薦し、
それを読んだ小林監督は自分なりにこの世界を描きたいとして、
その後に『風の波紋』となる自作品の構想をスタートさせました。
(という風に理解してるんですが)
これも以前にも書きましたが担当者は10年くらい前か、
どん底に突き落とされてしまった際に道を歩いてるとご主人に遭遇し、
当時、移住したばかりで田んぼを始めたご主人から田植えに来ないか、
と誘われて大崩へと赴き生まれて初めて手植えを経験し土と田んぼの水が肌から、
身体の中へと伝わる過程で心が再生していくような得難い思いをしました。
極端に言えばご主人の田んぼで自分は生き返ったのではないかと。
その縁がこうして今回、お世話になってる柴田監督の新作『百姓の百の声』に繋がると思うと、
これもまた何かの縁なんだろうと自分なりに思ったりします。
などと書いてご主人の田んぼは幸い酷暑の夏とはいえ、そんな悪い生産量にはならないようで、
無事に美味しい新米へとなりますことを。
ちなみに脱穀までした後、ご主人は山形国際ドキュメンタリー映画祭に行くそうで、
てっきり『百姓の百の声』座談会参加のために勉強に行くんですか?
と尋ねたら笑いながら否定しておりました。
まぁ、山形での経験が座談会の参考になることは間違いないかと思います。
画像が大崩のご主人 阿部恭司さん。
かろうじて背広姿のサラリーマン時代を覚えてますが、今はすっかり仙人といった趣が。
11/11 『百姓の百の声』長岡上映会と柴田昌平監督座談会
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