そこのみにて光り輝く

観賞前は辛口のラブストーリーという印象、しかしそれも間違いではありませんが、
「酒井家のしあわせ」「オカンの嫁入り」と家族映画に固執していた呉美保監督、
本作もやはり家族、それもおぞましいまでの家族映画として別の一面を見せて戦慄しました。
家族に憧れる主人公の前に現れた因果なヒロイン。
どうあがいても救われない家族の業にのたうちまわる姿を呉監督は女性らしからぬ、なのか
女性だからこそなのか一貫して深くナイフを貫くように返り血覚悟で、
救われない業を描き切り、間違いなく現在進行形の映画作家として大きく飛躍を遂げています。
そしてちょうど観賞したT・ジョイ長岡では師匠の大林宣彦監督が北海道を舞台に“古里映画”として、
またも離れ業のようにアバンギャルドな新作が公開中でしたが、
呉監督が舞台にした函館は函館という名前は登場しなくても、
恥部まであからさまに描き師匠の説く古里映画と一線を画している気がしたのも面白かったです。
担当者は「ジョゼと虎と魚たち」の池脇千鶴の姿に思い入れを持つ者ですが、
あれから何年なのか近年これほど汚れきった女優さんはいないのではないかというほど、
おぞましく美しいヒロインとして、それも呉監督の手腕なのでしょうが女優として大きく屹立したと思います。
そして第3回長岡インディーズムービーコンペティショングランプリ受賞作「由布院源流太鼓」では自身の片想いをフィルムに刻み込んでいた呉監督が、
この題材に真正面から挑んでしまったことに改めて戦慄を覚えました。
「そこのみにて光り輝く」
いまどき貴重な口あたりのよくない、触れたら容易に生傷となるザラついた映画なのでお勧めいたします。
http://hikarikagayaku.jp/
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