長岡アジア映画祭実行委員会!ブログ

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ドキュメンタリー映画『わたしの季節』の撮影をめぐって 監督・撮影 小林茂

小林茂監督より「長岡アジア映画祭’14」にて上映する「わたしの季節」について
2005年にキネマ旬報に掲載された自論の転載を了解いただきました。
長いので三回に分けて掲載します。



 ドキュメンタリー映画『わたしの季節』が完成し、先日、映画の舞台となりました重症心身障害児(者)施設第二びわこ学園の地元、滋賀県野洲市で完成記念上映会を開催できました。また、キネマ旬報の文化映画のベストテン入賞や、第59回毎日映画コンクールで記録文化映画賞(長編)を受賞するなど、皆様方から高い評価をいただき、たいへんありがとうございました。これからの上映にあたって、多くの方々にご覧いただけるよう努力したいと思っております。
 さて、2月6日の毎日新聞紙上におきまして、このたびの毎日映画コンクールの講評が掲載されました。その中で、記録文化映画賞(長編)の選定委員会から、その選定過程や作品の講評も掲載されたところです。多くの「力作ぞろい」の作品の中から、『わたしの季節』を選んでいただきましたこと感謝申し上げます。
 「ナレーションを一切排し、入所者や家族、学園で働く人々の様子を、凝視するように、空前の鮮明な映像と録音でとらえ、臨場感を生んでいる。その映画的力強さが、観客に生きる意味の再考を促す」と評していただきました。
 そして、続けて、「ただ、撮影が、被写体である心身障害者 『本人の了承』の下で撮影されたのか、疑問が残る。映像の力と倫理の関係について議論する契機としても、広く見られるべき問題作だ」と結ばれております。
 心身障害者「本人の了承」と、括弧でくくられていますように、多くのことが内包された言葉だと思います。私も映画製作の間、「本人の了承」ということについて、考えつづけてきましたが、ご指摘いただいて、あらためてその意味の深さを思いめぐらすとともに、この映画からいろいろなことを考えていただく良い機会になればと思い、筆をとりました。
 
 映画製作を始めるにあたり、学園関係者、家族の会のみなさま、利用者のみなさまと、論議を重ねながらやってまいりました。撮影許可に関しましては、120数名の方々の家族のみなさま一人一人から書面をもって了承をいただいております。数名の方を除きまして許可いただけましたことは、映画に対する期待の大きさも伺わせるものでした。
 しかし、現場では、その許可があればすむというものでもなく、私がすんなりキャメラを回せたのではありません。Aさんの場合をお話します。
 
 Aさん(男性・53歳)は、自傷行為で失明され、痛々しい顔の傷痕が見受けられました。そして、普段は窓際のカーテンにつかまり、横になりながら、2本のしゃもじ(おへら)で床をリズミカルに叩いていました。その音がすばらしく、撮影したい気持ちはありましたが、その姿を見た人が、どのように受け取られるかと考えると、深いためらいが湧いてきます。しかし、長い間、通いますと、その姿の歴史が分かってきました。
 自傷行為を止めるために、職員たちはいろいろなことを試すなかで、しゃもじを持ち、床を叩いているときに、安定することを発見したのです。
 また、ある日のお茶の時間に、私が「お茶ですよ」と声をかけたときのことです。Aさんはむっくと起き上がり、すっと静かに両手をそろえ差し出したのです。その両手に茶碗を置くと、両手で包みこみ拝むように口に運びました。それはまるで茶室で茶をいただいているようにも、仏者の托鉢の姿にも見えたのです。その美しい姿が目に焼きつき、Aさんを撮影できるようになった自分を感じました。
 その気持ちを面会に来ておられるお兄さんにお話しました。そして、私は密着したレンズがAさんの心の奥底に届くように祈りながら長くカメラを回したのです。
 現像からあがったフィルム(ラッシュ)は可能な限り、家族の会、利用者、職員に公開し、お互い意見を交換しながら進めてきましたので、Aさんのラッシュも家族の会でお見せしました。その音のない映像を見ながら、お兄さんは泣きました。心配しながら亡くなった母親、兄弟の50年を思い起こされたのでしょう。
 Aさんから直接、「本人の了承」を通常の形で得ることはできません。後見人の方から了承をいただいたから、それでいいとも、言いきれません。なにより、キャメラを回せる気持ちの覚悟がなければ、レンズを向けられませんでした。さらに、撮影したものを見て、お兄さんも、職員も、スタッフも、その映像を世に送り出す覚悟を共有しなければなりませんでした。

つづく

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*「わたしの季節」は11月2日(日)14時10分より上映し、
上映後に小林茂監督講演“重い障がいを生きる意味”を開きます。

『わたしの季節』
2004年/日本/107分/原版16mm、DVD上映/カラー/英題 “AND LIFE GOES ON”
監督・撮影 小林茂 /撮影 松根広隆/編集 佐藤真 泰岳志 /助監督 吉田泰三
製作 協映

重症心身障害(児)者療育施設「びわこ学園」で40年間生きてきた人々の日常
と心象を描くドキュメンタリー映画。小林茂監督がクランクイン直前に脳梗塞で
倒れた体験が色濃く反映され、障害があるとかないとかの境界を越えて、人が生
きていくことの意味を問うている。(小林茂)
毎日映画コンクール記録映画賞、文化庁映画大賞、山路ふみ子福祉映画賞受賞作品。

小林茂(こばやし・しげる) ドキュメンタリー映画監督
1954年生まれ。「阿賀に生きる」の撮影を担当。当時としては異例の劇場でのロー
ドショー公開がなされ、国内外の映画賞を受賞、映画界で一大ブームを巻き起こ
した。撮影により第1回JSC賞受賞。監督・撮影作品に「わたしの季節」「こども
のそら」「ちょっと青空」「チョコラ!」など。2013年度、長岡「米百俵賞」受
賞。透析歴7年。現在、豪雪地帯と舞台に「風の波紋」を制作中。

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