『スターティング・オーヴァー-Just Like Starting Over-』
五藤利弘監督より自作「スターティング・オーヴァー」の感想を書いてくださった方の

栃尾ご出身で欧州復興開発銀行で活動している中沢賢治さんが『スターティング・オーヴァー-Just Like Starting Over-』のご感想を下さりました。
細かいところまで観て下さっていますので、映画祭で上映頂く前にぜひご紹介させて頂きたく、中沢さんにご了承を頂いて掲載頂きます。
以下、中沢さんのご感想です。
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長岡出身の五藤利弘監督の映画「スターティング・オーヴァー」を観た。
2009年の「モノクロームの少女」、2012年の「ゆめのかよいじ」を観た時には感激してすぐに感想を書いた。
わたし自身の郷里である長岡市栃尾を舞台にした抒情性に富んだ美しい映画に感謝したかったからだ。
上記の前2作は登場してくる人物たちの必死の想いに加えて、監督自身の様々な想いが込められた魂の映画だ。
ロケ地である長岡市の栃尾、刈谷田川、和島などに思い入れを持つ観客にとって、こうした映画が劇場で公開され、日本中のツタヤにいけばDVDとして販売されていることは「奇跡」に近い。この監督に深い感謝を覚える理由だ。
この長編第三作はこれまでのものとは違っている。
一番の違いはこの映画の中で監督が見せる遊び心だ。
この映画の主人公である不器用な映画青年は引っ越し準備で忙しい。たくさんのシナリオ雑誌を引っ越し用の段ボールに詰めている場面は監督自身を登場させるヒッチコックやリャザノフの作品を連想させる。
映画の中に監督自身の前2作のパンフが登場したり、長岡と栃尾関係の小道具が多用されている。
この主人公が過去につき合った女友達の写真を隠す缶は長岡名物の元祖浪花屋の柿の種。
古いものを整理して思い出すのが好きで、捨てられない人らしい。
十年来の付き合いの彼女と今日で別れるための引っ越し準備の最中に栃尾の銘酒「越の景虎」をたっぷり使って夕食を作る。
優しい人なのだ。別れの晩餐には冷蔵庫に残っていたものをあるだけ使って美味しそうなものを並べる。
いろいろな料理が主人公の好きな映画にちなんで説明される場面で登場するのが、栃尾の名店「豆撰」の油揚げ。
この時のセリフ「これは映画「モノクロームの少女」の中で大杉漣が食べた油揚げだぜ」というところで思わず「そうそう」と声をかけたくなる。
不器用な主人公とヒロインの会話のぎこちない感じもいい。ヒロインは呼びかける。
「あの地震の時に守ってくれたじゃない。あれから十年よ。あたしが地元の短大を出て再会してから、ずっと一緒にやってきたじゃない」という訴えを聞いて観客はこの映画の意味を知る。
これは「モノクロームの少女」のヒロインだったくるみちゃんと彼の後日譚なのだ。
引っ越し準備の途中で腹を立てたヒロインに追い出された主人公が困り果てて迷いこむ深夜のおかまバーの場面が最高だ。
この映画のストーリーに重要な役割を果たしている。
「十年の後」というのはほろ苦い青春を回顧した柴田翔の小説の題名だ。
文庫の「贈る言葉」に表題作と一緒に入っている。
五藤監督がシナリオライターとして奮闘し、羽ばたくことを夢見た時期を描いたこの映画は、いろいろユーモア交じりの仕掛けがしてあるが、実はかなりほろ苦い作品だ。
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『スターティング・オーヴァー』 11月1日19時30分~
2013年/日本/84分/日本語/BD/カラー/英題 “Just Like Starting Over” R-15
脚本・監督 五藤利弘
出演 片山 享 成澤優子 日高ゆりあ 生島勇輝
配給 アートポート 2013娯楽TV/ひかりTV
洋子(26)と太郎(26)は、慌ただしく引っ越しの準備をしていた。 高校2年の時につきあい始め、二人では東京で一緒に暮らし始めた。10年の時が流れ、お互いの気持ちにも変化が見え始め、太郎の心は別の女性に移り、そして二人はついに別れる事になってしまう。一緒に荷物を片付ける中、ついつい昔話をしてしまい、なかなか先に進まない。 「それぞれの愛があり、それぞれの再出発があります。 もしかしたらあなたは違う再出発を選ぶかもしれない。 でも、彼らが選んだ再出発は…。-----五藤利弘」
http://cinema.artport.co.jp/startingover/

栃尾ご出身で欧州復興開発銀行で活動している中沢賢治さんが『スターティング・オーヴァー-Just Like Starting Over-』のご感想を下さりました。
細かいところまで観て下さっていますので、映画祭で上映頂く前にぜひご紹介させて頂きたく、中沢さんにご了承を頂いて掲載頂きます。
以下、中沢さんのご感想です。
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長岡出身の五藤利弘監督の映画「スターティング・オーヴァー」を観た。
2009年の「モノクロームの少女」、2012年の「ゆめのかよいじ」を観た時には感激してすぐに感想を書いた。
わたし自身の郷里である長岡市栃尾を舞台にした抒情性に富んだ美しい映画に感謝したかったからだ。
上記の前2作は登場してくる人物たちの必死の想いに加えて、監督自身の様々な想いが込められた魂の映画だ。
ロケ地である長岡市の栃尾、刈谷田川、和島などに思い入れを持つ観客にとって、こうした映画が劇場で公開され、日本中のツタヤにいけばDVDとして販売されていることは「奇跡」に近い。この監督に深い感謝を覚える理由だ。
この長編第三作はこれまでのものとは違っている。
一番の違いはこの映画の中で監督が見せる遊び心だ。
この映画の主人公である不器用な映画青年は引っ越し準備で忙しい。たくさんのシナリオ雑誌を引っ越し用の段ボールに詰めている場面は監督自身を登場させるヒッチコックやリャザノフの作品を連想させる。
映画の中に監督自身の前2作のパンフが登場したり、長岡と栃尾関係の小道具が多用されている。
この主人公が過去につき合った女友達の写真を隠す缶は長岡名物の元祖浪花屋の柿の種。
古いものを整理して思い出すのが好きで、捨てられない人らしい。
十年来の付き合いの彼女と今日で別れるための引っ越し準備の最中に栃尾の銘酒「越の景虎」をたっぷり使って夕食を作る。
優しい人なのだ。別れの晩餐には冷蔵庫に残っていたものをあるだけ使って美味しそうなものを並べる。
いろいろな料理が主人公の好きな映画にちなんで説明される場面で登場するのが、栃尾の名店「豆撰」の油揚げ。
この時のセリフ「これは映画「モノクロームの少女」の中で大杉漣が食べた油揚げだぜ」というところで思わず「そうそう」と声をかけたくなる。
不器用な主人公とヒロインの会話のぎこちない感じもいい。ヒロインは呼びかける。
「あの地震の時に守ってくれたじゃない。あれから十年よ。あたしが地元の短大を出て再会してから、ずっと一緒にやってきたじゃない」という訴えを聞いて観客はこの映画の意味を知る。
これは「モノクロームの少女」のヒロインだったくるみちゃんと彼の後日譚なのだ。
引っ越し準備の途中で腹を立てたヒロインに追い出された主人公が困り果てて迷いこむ深夜のおかまバーの場面が最高だ。
この映画のストーリーに重要な役割を果たしている。
「十年の後」というのはほろ苦い青春を回顧した柴田翔の小説の題名だ。
文庫の「贈る言葉」に表題作と一緒に入っている。
五藤監督がシナリオライターとして奮闘し、羽ばたくことを夢見た時期を描いたこの映画は、いろいろユーモア交じりの仕掛けがしてあるが、実はかなりほろ苦い作品だ。
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『スターティング・オーヴァー』 11月1日19時30分~
2013年/日本/84分/日本語/BD/カラー/英題 “Just Like Starting Over” R-15
脚本・監督 五藤利弘
出演 片山 享 成澤優子 日高ゆりあ 生島勇輝
配給 アートポート 2013娯楽TV/ひかりTV
洋子(26)と太郎(26)は、慌ただしく引っ越しの準備をしていた。 高校2年の時につきあい始め、二人では東京で一緒に暮らし始めた。10年の時が流れ、お互いの気持ちにも変化が見え始め、太郎の心は別の女性に移り、そして二人はついに別れる事になってしまう。一緒に荷物を片付ける中、ついつい昔話をしてしまい、なかなか先に進まない。 「それぞれの愛があり、それぞれの再出発があります。 もしかしたらあなたは違う再出発を選ぶかもしれない。 でも、彼らが選んだ再出発は…。-----五藤利弘」
http://cinema.artport.co.jp/startingover/
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