サヨナラ、オレ サヨナラ、あたし

高田世界館での「転校生」のフィルム上映。
スクリーンに映し出されたフィルムはすっかり褪色し時折雨も降っていましたが、
今年で104年というこの高田世界館での上映にふさわしく感動もひとしおでした。
特に冒頭に広がる尾道の古ぼけた街並みから一気に大林ワールドへと。
上映後の講演で大林監督は完成後に尾道市から上映中止命令が出たという有名なエピソードを。
ひび割れた瓦屋根や崩れた土塀など汚いものばかり撮ったので、
これでは誰も尾道に来たがらないのではと、
全国から今も観光客が押し寄せる街になった今では考えられませんが、
当時は「古い尾道の皺を撮ろう」などという大林監督の考えは理解されなかったそうで、
なおのことこの104年という高田世界館を折に触れて賞賛していました。
ちなみに今の尾道についてもお話しし、
空き家が増えたものの、そこへ若者たちが移住をしはじめまた面白くなっているそうです。
また皇太子殿下が一番好きな映画として「転校生」と監督に打ち明けたそうですが、
その流れで先の皇太子が55歳になられた時の記者会見での戦争と平和についての考えの要旨を
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015022302000132.html
監督はソラで語り始めて、その記憶力に驚かされました。
ところでこの「転校生」の上映では途中、フィルムが反対のまま巻かれて渡ってきてしまい、
そのまま映写機にかけたところ音が消えてしまい、
しばし中断となったことがあったのですが、
講演の中で大林監督は触れて目を細めながら
「人が作ったものはアクシデントや事故がある
人の作ったものは必ず壊れるものがある
それにどう対処をしていくか」
などと話してこれもフィルム上映の楽しみなんだと言いたそうでした。
その流れ長岡市立劇場での「故郷は緑なりき」上映会も映写トラブルがあり、
1回目の上映がとてもうまくいったので、
2回目は油断をしていたのか5分ほど中断、あげくに場内の明かりをつけてしまいました。
以前の上映会でもよくあり、そのたびに今回も心臓が止まってしましましたが、
映写技師さんも相当なプレッシャーだったんだと思うことができました。
上映後に映写技師さんから舞台に立ってお客さんに一言謝った方がいいと言われたものの、
余韻に浸ってる皆さんの前でマヌケ面を晒すのはどうかと思いながら、
謝った方がいいと判断し上映後にマイクを持ってお詫びをしたところ、
怒られるかと思ったら盛大な拍手をいただきとても嬉しかったです。
昔を思い出した、あれは演出ではないのか?
などと散々言われましたが、そのようなことは全く考えていませんでした。
このことを大林監督に伝えたところ、やはり目を細めて頷いておりました。
「転校生」は尾道三部作の第一作として日本映画史に名を残す名作.
なんといってもロケ地めぐりという映画巡礼が一般化された最初の作品だったと改めて観ながら実感しました。
確かにこれを観たら尾道の街のシワを散策したくなる魅力に溢れておりました。
ついでに8㎜少年という設定の尾身としのり扮する一夫くんが、
小林聡美扮する一美さんに入れ替わってから
尾道の花火を指でフレームを作りながら見上げるシーンが、
その後の「この空の花」への伏線ではないかと観ながら思っていました。
画像は見学させていただいた高田世界館の年季の入った35㎜映写機。
この映写室を舞台にした映画が谷口正晃監督の「シグナル 月曜日のルカ」
大林監督が高田世界館に来るならばと谷口監督もこの日、来場していました。
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