第10回大阪アジアン映画祭 映画祭巡礼記
*昨年に続いてのS東京特派員の大阪アジアン映画祭巡礼記。
3月6日から15日に開催されたようです。
レポありがとうございます。
http://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-371.html
http://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-372.html
ちなみに昨年のレポートはこちら↑
http://www.oaff.jp/2015/ja/index.html
メイン会場のABCホール
今年も大阪アジアン映画祭に行ってきました。コンペ部門に加え招待作品や特集上映など多彩なラインナップで数えたら43作品が上映。アジア映画の映画祭としては国内最大級の映画祭ですね。私はラストの2日間で8本だけしか見れなかったのでとうぜんその全貌は把握できてませんが、見た範囲だけをとっても充実した作品ばかりだったと思います。それでは以下に見た作品の感想を書きたいと思います。
「いつかまた」中国 ハン・ハン監督
監督のハン・ハンは作家で、他にもラリーレーサー、歌手、というマルチな才能の持ち主。その上初監督作品も興収が日本円にして119億円の大ヒット。すごい人です。
ウィリアム・フォンとチェン・ボーリンというイケメンが主人公ですがこの二人がいい年なのに独身という田舎のしょぼくれた青年。その二人の中国大陸を端から端まで横断するロードムービー。全編ゆるーいムードでオフビートなコメディ。でもその珍道中の中に中国の抱えるいろんな問題を描いていてかなりブラック。新しさを感じさせました。
ABC賞を受賞しています。4月11日から早くも日本公開が決まりました。

「コードネームは孫中山」左から出演のジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさん、イー・ツーイェン監督。
「コードネームは孫中山」台湾 イー・ツーイェン監督
なんと「藍色夏恋」から12年振りというイー・ツーイェン監督の新作。ラブストーリーでグイ・ルンメイとチェン・ボーリンをデビューさせた監督の新作はまたも高校生が主人公…という期待が裏目に出た感じでちょっと肩透かし。ただそれはまちがった期待をしてしまったこちらにも問題はありそうで、バカな男子高校生たちが引き起こす大騒動を楽しみつつ、その裏に秘められたさまざまな寓意を読み解く…というのが正しい見方。主演の少年2人もこれからの活躍が楽しみです。
この作品はグランプリと観客賞を受賞しました。

「全力スマッシュ」左から音楽担当のハタノ・ユウスケさん、出演のスーザン・ショウさん、ヘンリー・ウォン監督、デレク・クォク監督
「全力スマッシュ」香港 デレク・クォク、ヘンリー・ウォン監督
「少林サッカー」を生んだ香港映画的な極端スポーツ・コメディ映画。もうちょっと整理しろよといいたくなるぐらいのアイディア満載、ギャグ満載。バトミントンとはまたマイナーなスポーツを選んだなぁ…と思ったら主演のジョシー・ホー、イーキン・チェンが得意なスポーツなのだそうで。そのせいかこの映画のジェシー・ホー、いつにもまして魅力的です。バトミントンが下手な役のイーキンのコメディ演技も新鮮でした。上映前に舞台あいさつがあり、デレク・クォク監督が最後に「前の日の上映は音が小さかった。映写の人、今日は大きな音で頼むよ」といって退場したあとにすごい爆音上映が始まるという素敵なやりとりも楽しかったです。

「サシミ」左から出演のタクヤさん、波多野結衣さん、パン・チーユエン監督。
「サシミ」台湾 パン・チーユエン監督
ツァイ・ミンリャン監督とのコンビでおなじみのリー・カンション主演。あのリー・カンションが日本語で演技!というだけでも必見ですが台湾から見た日本観も興味深いものがあります。こういう風に日本が理解されているんだなあという外からの視点を知ることもよいことかもしれません。日本からは波多野結衣が出演しています。AV、サシミ、…特になぜあんなに外国映画で女体盛りが人気なのか誰か教えて。民宿を営むリー・カンションの店で働く店員役でテレサ・チー(「九月に降る風」「南風」)も出演。
「単身男女2」香港 ジョニー・トー監督
常連トーさんの新作は2011年の大阪アジアン映画祭で上映された「単身男女」の続編。
以前はシブイ男優を使って撮った趣味の映画と、その映画を作るためのスター主演の商業映画と二分されてもっぱら前者のみで評価されてきたような気がしますがいまやそんな区分けは存在しない、どれをとってもトーさん印の無類の面白さだと思うのですがなぜか公開されるのは犯罪映画ばかり。コメディ映画も映画的な面白さに満ちたものばかりなので日本公開を切に願いたいです。しかしトー監督ってあまり続編ものをやらないこの続編、前作をひっくりかえしていてただの続きになってないところがやはりすごいですね。
「バングラシア」マレーシア・バングラデシュ Namewee監督
大阪アジアン映画祭常連のNamewee監督の新作はバングラディシュから来た出稼ぎの男が彼らを苦しめるやくざと戦う、というおおざっぱにいえばアクション・コメディ。しかしそこにちりばめられた風刺が理由で検閲によってマレーシアでは上映できなかったという作品。しかしその検閲というのがそうとう理不尽なもののようで、逆にマレーシアについて公式ではない、政府にとって触れてほしくないところがこの映画には盛り込まれているともいえるわけで、マレーシアの一面を教えてくれる映画だったと思います。

「ファニーを探して」ポスターはなぜか鶏をさばくディーピカー・パードゥコーン
「ファニーを探して」 インド ホーミー・アダジャニア監督
上映時間106分。セリフは英語。インド映画のグローバル化もここまできたかという感じです。
歌も踊りもほんのいいわけ程度しかないし、登場人物は変人ばかりだし、と従来のインド映画のイメージを覆すものでかなり戸惑いました。ですが、ヒロインのディピーカー・パードゥコーン(「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」)の美しさはまばゆいばかり。これは認めない人はいないでしょう。大阪アジアン映画祭はシネコン化によってもたらされたインド映画の変化を追っているようでこの映画もそのひとつと言えそうです。

「ホイにオマカセ」ポスター。両方同じ人です。
「ホイにオマカセ」ベトナム・韓国 チャーリー・グエン監督
大阪アジアン映画祭は芸術的な作品も上映されますが、そういう作品よりも娯楽性の高い、その国でより一般に好まれていて、なおかつ質も高い、そういう映画の王道ともいえる作品(でも地域性からかあまり日本ではなかなか公開されない)を積極的にとりあげているように感じます。今回の特集も東南アジアのアクション映画。「ザ・レイド」とかすでに何本も日本公開作が出てきて、かなりの裾野を感じさせるジャンルですが、その特集にそっと入れられたのがこの作品。アクションも確かにありますがどちらかといえばコメディ映画。かなり強引な気がします。しかし、多少ムリをしても入れたかったという気持ちが伝わってくるようなムチャクチャ笑えて楽しい映画でした。いやあこんなに面白い映画がベトナムにあるとは思いませんでした。ベトナム映画なめていてすみません、って感じです。主人公ホイは2010年の前作では脇役だったキャラクターで、人気があって今回は彼が主人公。いわばスピンオフですが、「ピンクパンサー」が初めは脇役だったクルーゾー警部が主人公になったようにこの映画もシリーズ化してホイの活躍をもっと見たいと思いました。
この映画で私の大阪アジアン映画祭は終わり。いい気持ちで締めくくれてよかった。
新年あけてからはじめてのアジア映画系の映画祭で、季節も春(ちょっとまだ寒いけど)と新しい始まりを感じさせる映画祭。そして2011年は期間中に東日本大震災が起こり、以来震災関連の企画上映を続けていて、そういう意味でも1年の節目を感じさせる映画祭です。来年もまた3月大阪でまだ見ぬアジア映画の秀作に出会えることを楽しみに待ちたいと思います。
3月6日から15日に開催されたようです。
レポありがとうございます。
http://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-371.html
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ちなみに昨年のレポートはこちら↑
http://www.oaff.jp/2015/ja/index.html

今年も大阪アジアン映画祭に行ってきました。コンペ部門に加え招待作品や特集上映など多彩なラインナップで数えたら43作品が上映。アジア映画の映画祭としては国内最大級の映画祭ですね。私はラストの2日間で8本だけしか見れなかったのでとうぜんその全貌は把握できてませんが、見た範囲だけをとっても充実した作品ばかりだったと思います。それでは以下に見た作品の感想を書きたいと思います。
「いつかまた」中国 ハン・ハン監督
監督のハン・ハンは作家で、他にもラリーレーサー、歌手、というマルチな才能の持ち主。その上初監督作品も興収が日本円にして119億円の大ヒット。すごい人です。
ウィリアム・フォンとチェン・ボーリンというイケメンが主人公ですがこの二人がいい年なのに独身という田舎のしょぼくれた青年。その二人の中国大陸を端から端まで横断するロードムービー。全編ゆるーいムードでオフビートなコメディ。でもその珍道中の中に中国の抱えるいろんな問題を描いていてかなりブラック。新しさを感じさせました。
ABC賞を受賞しています。4月11日から早くも日本公開が決まりました。

「コードネームは孫中山」左から出演のジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさん、イー・ツーイェン監督。
「コードネームは孫中山」台湾 イー・ツーイェン監督
なんと「藍色夏恋」から12年振りというイー・ツーイェン監督の新作。ラブストーリーでグイ・ルンメイとチェン・ボーリンをデビューさせた監督の新作はまたも高校生が主人公…という期待が裏目に出た感じでちょっと肩透かし。ただそれはまちがった期待をしてしまったこちらにも問題はありそうで、バカな男子高校生たちが引き起こす大騒動を楽しみつつ、その裏に秘められたさまざまな寓意を読み解く…というのが正しい見方。主演の少年2人もこれからの活躍が楽しみです。
この作品はグランプリと観客賞を受賞しました。

「全力スマッシュ」左から音楽担当のハタノ・ユウスケさん、出演のスーザン・ショウさん、ヘンリー・ウォン監督、デレク・クォク監督
「全力スマッシュ」香港 デレク・クォク、ヘンリー・ウォン監督
「少林サッカー」を生んだ香港映画的な極端スポーツ・コメディ映画。もうちょっと整理しろよといいたくなるぐらいのアイディア満載、ギャグ満載。バトミントンとはまたマイナーなスポーツを選んだなぁ…と思ったら主演のジョシー・ホー、イーキン・チェンが得意なスポーツなのだそうで。そのせいかこの映画のジェシー・ホー、いつにもまして魅力的です。バトミントンが下手な役のイーキンのコメディ演技も新鮮でした。上映前に舞台あいさつがあり、デレク・クォク監督が最後に「前の日の上映は音が小さかった。映写の人、今日は大きな音で頼むよ」といって退場したあとにすごい爆音上映が始まるという素敵なやりとりも楽しかったです。

「サシミ」左から出演のタクヤさん、波多野結衣さん、パン・チーユエン監督。
「サシミ」台湾 パン・チーユエン監督
ツァイ・ミンリャン監督とのコンビでおなじみのリー・カンション主演。あのリー・カンションが日本語で演技!というだけでも必見ですが台湾から見た日本観も興味深いものがあります。こういう風に日本が理解されているんだなあという外からの視点を知ることもよいことかもしれません。日本からは波多野結衣が出演しています。AV、サシミ、…特になぜあんなに外国映画で女体盛りが人気なのか誰か教えて。民宿を営むリー・カンションの店で働く店員役でテレサ・チー(「九月に降る風」「南風」)も出演。
「単身男女2」香港 ジョニー・トー監督
常連トーさんの新作は2011年の大阪アジアン映画祭で上映された「単身男女」の続編。
以前はシブイ男優を使って撮った趣味の映画と、その映画を作るためのスター主演の商業映画と二分されてもっぱら前者のみで評価されてきたような気がしますがいまやそんな区分けは存在しない、どれをとってもトーさん印の無類の面白さだと思うのですがなぜか公開されるのは犯罪映画ばかり。コメディ映画も映画的な面白さに満ちたものばかりなので日本公開を切に願いたいです。しかしトー監督ってあまり続編ものをやらないこの続編、前作をひっくりかえしていてただの続きになってないところがやはりすごいですね。
「バングラシア」マレーシア・バングラデシュ Namewee監督
大阪アジアン映画祭常連のNamewee監督の新作はバングラディシュから来た出稼ぎの男が彼らを苦しめるやくざと戦う、というおおざっぱにいえばアクション・コメディ。しかしそこにちりばめられた風刺が理由で検閲によってマレーシアでは上映できなかったという作品。しかしその検閲というのがそうとう理不尽なもののようで、逆にマレーシアについて公式ではない、政府にとって触れてほしくないところがこの映画には盛り込まれているともいえるわけで、マレーシアの一面を教えてくれる映画だったと思います。

「ファニーを探して」ポスターはなぜか鶏をさばくディーピカー・パードゥコーン
「ファニーを探して」 インド ホーミー・アダジャニア監督
上映時間106分。セリフは英語。インド映画のグローバル化もここまできたかという感じです。
歌も踊りもほんのいいわけ程度しかないし、登場人物は変人ばかりだし、と従来のインド映画のイメージを覆すものでかなり戸惑いました。ですが、ヒロインのディピーカー・パードゥコーン(「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」)の美しさはまばゆいばかり。これは認めない人はいないでしょう。大阪アジアン映画祭はシネコン化によってもたらされたインド映画の変化を追っているようでこの映画もそのひとつと言えそうです。

「ホイにオマカセ」ポスター。両方同じ人です。
「ホイにオマカセ」ベトナム・韓国 チャーリー・グエン監督
大阪アジアン映画祭は芸術的な作品も上映されますが、そういう作品よりも娯楽性の高い、その国でより一般に好まれていて、なおかつ質も高い、そういう映画の王道ともいえる作品(でも地域性からかあまり日本ではなかなか公開されない)を積極的にとりあげているように感じます。今回の特集も東南アジアのアクション映画。「ザ・レイド」とかすでに何本も日本公開作が出てきて、かなりの裾野を感じさせるジャンルですが、その特集にそっと入れられたのがこの作品。アクションも確かにありますがどちらかといえばコメディ映画。かなり強引な気がします。しかし、多少ムリをしても入れたかったという気持ちが伝わってくるようなムチャクチャ笑えて楽しい映画でした。いやあこんなに面白い映画がベトナムにあるとは思いませんでした。ベトナム映画なめていてすみません、って感じです。主人公ホイは2010年の前作では脇役だったキャラクターで、人気があって今回は彼が主人公。いわばスピンオフですが、「ピンクパンサー」が初めは脇役だったクルーゾー警部が主人公になったようにこの映画もシリーズ化してホイの活躍をもっと見たいと思いました。
この映画で私の大阪アジアン映画祭は終わり。いい気持ちで締めくくれてよかった。
新年あけてからはじめてのアジア映画系の映画祭で、季節も春(ちょっとまだ寒いけど)と新しい始まりを感じさせる映画祭。そして2011年は期間中に東日本大震災が起こり、以来震災関連の企画上映を続けていて、そういう意味でも1年の節目を感じさせる映画祭です。来年もまた3月大阪でまだ見ぬアジア映画の秀作に出会えることを楽しみに待ちたいと思います。
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